[自作小説]彼岸にて12

小説




僕は小学生のときに仮面をつけた.やがてそれは当たり前になっていった.だから親の前でも自分を演じることに違和感は感じなかった.でもおかしいなとは思っていた.なんで君は親とそんな親しく話せるの?なんで君は僕と話すときと少しも変わらないの?でも,今更自分をさらけ出すのは恥ずかしかった.自分を見せるくらいなら死んだほうがましだと思えるくらいに.

皆だって人前で自分を偽ることがある.こんなの誰だってそうさ.でも僕は決定的に彼らとは違う.次元が違うんだ.若い頃の喫煙や薬物の影響が大人のそれよりも甚大であるように,僕は’空白’に浸食され切ってしまっているんだ.
もう生きていないんだ…

止んでいたはずの雨が頬を伝った.

「うおおおおお」
そして僕はライオンのように吠えた.

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